( PJ003 )
1. 奇妙な夢
1 – 1 僕達の父上
「どうしたの?」
「夕べ、奇妙な夢を見たよ。」
「で、どんな夢?」
「僕達の父上が、夢の中に現れた。」 とソレール。
『・・・・私の可愛い子達、私の王国ネヴァーランドに会いにおいで。
お前さん達の幸福に出会えるだろう。
ネヴァーランドの鏡の間が、私の大切な宝物を映し出す。』
とリュネールが言葉を続ける。
「えっ!なんだって。君も僕と同じ夢を見たってこと?」
驚いたソレールがリュネールをじっと見つめる。
「一体どういうことなのだろう。」 とリュネール。
1 – 2 サーカスのふたごのピエロ
ソレール と リュネールは、田舎サーカスのふたごのピエロ。
歌い手リュネールは、鳥達よりも美しい歌を唄う。
「つまりは、僕達は国王の子だということ?」 リュネールが尋ねる。
「まっ・さ・かぁ~! 奇妙だねぇ。」 とソレール。
「ねぇ・・・・・僕達は捨て子だよ。
だからサーカスの親方が、ソレール と リュネールと名付けた。
変てこな名前だけどね。」 とリュネール。
「そんなことないさ、いい名前さ。 この上なくね!
ハンプティ・ダンプティ*みたいにクールだろ。」 ソレールが答える。
*不思議の国のアリス ルイス・キャロル
1 – 3 少年
その数日後、
ふたりは、サーカスの観客達や親に連れられてやって来た大勢の子供達の中に、
ヴァイオリンを手にしたひとりの少年がいることに気づいた。
すると、少年の方からふたりに話しかけてくる。
□
□紫いろの 夜の中から ミューズは
獅子の背に 身を おどらせて
地上へと 舞いおりる
笑いながら、少年が歌うようにささやく。 それから煙のごとく忍者のごとく、
あっという間に姿を消した。
「 なぁ~んだ、あれゃ? 誰なの? あの子、つまり何を言いたいのだろう?」
とソレール。
「きっと、あの子も僕達と同じ捨て子だよ。 だから僕達と謎々遊びをしたいのだろう。」
とリュネールが答える。
「 バッカラシィ馬鹿! 」 とソレール。
「あの子はヴァイオリンがうまいの?」 リュネールが言う。
少年の突然の出現で、ふたりともサッパリわけが分からなくなってしまった。
1 – 4 石像
またリュネールが言う。「昨日も、父上が夢に現れた。」
『わが子よ、私に会いにおいで。
私に会おうとすることが、お前さん達に幸福を与えてくれる。』
「それから、小さな石像を指さした。 え~と、何と言ったらいいのかなぁ?・・・・・」
とソレールが言葉を続ける。
「丸い2個の石を積み上げた石像を、僕達はかがんで眺めていた。
すごく古そうだったね。」 とリュネールが続ける。
「ホント、奇妙な夢だね!」 とソレール。
「父上は何を言おうとしたのだろう? お城って何処にあるの?」
リュネールはいつだって夢心地だ。
「夢の中にだけあるのさ・・・・・ねぇ、リュネール、僕達は捨て子だよ。
君は、ぼんやりし過ぎ。」 と言いかけてソレールも黙ってしまう。
「僕達に父上がいるはずないよね。」 リュネールが泣きじゃくる。
「カボチャが金の馬車に変身するかよ。 変~?身~? ヘ・ン・シ~ン!」*
とソレールが独りぼやく。 ソレールは現実的である。
*シンデレラ姫 シャルル・ペロー
春雷 迷路パズル