PierrotsJumeaux011jp

9. 虹の城、ラルカン・シエル城

9 – 1  迷路

ついに、シャトーの扉が開いた! ふたりは不思議な暗闇の迷路に入り込んだ。
手探りでゆっくりと進まなければならない。

ふたりには何も見えず、何も聞こえない。何も。何も。何も。
「た・だ・い・ま・・・・着きました。 お邪魔しまっ~ す。」
「しま~ す。」
「お邪魔ですか・・・・」
「お邪魔じゃないでしょうか・・・・ 」

「僕達は何のためにシャトーへ来た? 無を見るために来た?」
リュネールが問う。
「もう、八方塞がりだ。 どうしよう。」 
ソレールが言う。
「口真似しないで。 どうしよう。」 
リュネールがいつもの口調で言う。

「僕達がサーカスを出発したのは、今では遥か遠い昔のこと。」
ソレールが嘆く。
「あれは春の日、雲ひとつない青空の春に出発した。 
そよ風が頬を撫でていた。」 
リュネールは思い出す。
「いつだったか、どこだったか、もう分からないよ。
もう、だめだ。どうしたらいいか分からない。
この霧では何も見えない。」 
ソレールの心が沈んでいく。
「ルテティアの都は美しかった。
記憶から消えるということがない。」 
リュネールが暗闇で言う。
「なんて馬鹿なのだろう! 僕達は。」 ソレールが絶望的な口調で言う。
「ぼんやりし過ぎたのだろう お月様みたいに。」 
今度は
リュネールがソレールの口真似をする。

全力でなんとか迷路を抜け出そうとしたが無駄だった。
迷路から抜け出すことができない。今、迷路のどのあたり?
どうしても抜け出せなかった。
「足に豆ができてしまった。もう何もしたくない。泣きっ面に蜂。」
リュネールが足の豆を嘆く。
「一巻の終わり、万事休す。 わけが分からない。 疲れた。」
ソレールが
しょんぼりと答える。
「こうやって、まだまだ困難の道は続くの?」 とリュネールが呟く。

「さぁ、元気を出して! 進め! 君達の道を進め」 
真っ暗闇の中で突然、チンチラが励ましてくれる。
「あっ~ 嬉しい。  君はそこにいてくれたの。」 とリュネール。
「いつだって君たちと一緒にいるよ。 君は、ひとりぼっちではないよ。」 
チンチラが暗闇の中で答える。
次第に眼が暗闇に慣れてきた・・・・・・・・
やっとのことで、ふたりは迷路をどうにかこうにか脱出することができた。
やった~。  あぁ、よかった。  ヤッタ~。
参ったな、今度ばかりは。   参りました。



□□□
トムソーヤとハックル・ベリーフィンの

冒険物語に 誘惑されて 僕達は
迷路の謎のなかに おしいる

( PJ005 )

9 – 2  アルテミス

窓越しに、ふたりは見た。
手には剣を持ちライオンの背にまたがり、
夜空から舞い降りてくる豪華な長い金髪の美しいダームを。
「豪華な人だ・・・・・」 とソレール。
「なんて可愛い子でしょう」 とアルテミス*が答える。

紫いろの 夜の中から ミューズ(詩の女神)
獅子の背に 身を おどらせて
地上へと 舞いおりる

「昔、ジュネスが言った通りだ。」
リュネールはジュネスの謎々遊びを思い出した。    
ずいぶん昔のことだ。

突然、アルテミスの剣が月の光を反射して迷路の中を明るく照らし出す。
「見て 大きな扉が見える。」 ソレールが喜んで叫ぶ。

*ブリジット・バルドー  フランス女優

桃花染(つきそめ)  迷路パズル